「BOB DYLAN / The Complete Budokan 1978」が、2023年11月15日に日本で先行発売されました。1978年にボブ・ディランが初来日し、2月28日と3月1日に武道館で行われた公演の完全収録アルバムです。当時の初来日公演は「武道館」というタイトルで、2枚組ライブ盤として日本のみで発売されました。このアルバムは、2月28日・3月1日の二日間を収録した中から抜粋してアルバムにまとめた物です。
2007年に二日間を録音した24chアナログマルチテープが発見され、それから何度もリリースの許可を得ようと試みた様ですが、その許可は下りなかった様です。それから15年、2022年にマネージメントから許可が下り、2023年に24chマルチテープから最新リミックスを行った物が今回発売された「コンプリート武道館」になります。
コンプリート武道館は4CDと8LPの二種類が発売され、いずれもBOXに収納されています。その中には当時未発表の写真や資料、そして記念品などが収められており、ディランファンとしてはとても魅力のある商品だと思います。
ただ、4CDが22,000円(税込) 8LPが44,000円(税込)で、アルバムとしてはかなり高額な物になりました。 とても欲しい! だが、買えない!
自分がボブ・ディランを聞き始めたのは中学3年生の頃で、一時期ボブ・ディランだけを聞いていた時がありました。ボブ・ディランの詞は難解とされ、ミュージシャンというより詩人のイメージがあります。実際にボブ・ディランは「ノーベル文学賞」を受賞しました。詩が受賞の対象になる事は珍しいと思います。それだけボブ・ディランの詞は評価が高いという事になります。 果たして、中学生のガキがその詞を理解していたのだろうか? 自分は、そんなませたガキではなかった。単純に、当時没頭していた吉田拓郎がボブ・ディランに影響を受けたと知ったからです。 ならば! という事で、形だけでもボブ・ディランを聞いて、彼の曲をコピーしギターを弾いていました。そんな訳で、詞はほとんど理解していませんでした。
ボブ・ディランの曲はメロディアスな物が多くはありませんが、多くの人を引き付けたのは詞の力が強かったためだろう。そのため、ファンというよりは教祖に近い存在だったかもしれません。いわば、フォークの神様だろう。 ボブ・ディランはやがてフォークからロックへ移行して行く訳ですが、旧来のフォークを愛する者にとってはとんでもない裏切り行為に感じたと思います。教祖が、キリスト教からイスラム教へ改宗する位の許されない行為に感じたのかもしれません。
1966年5月、イギリスのロイヤル・アルバート・ホールでボブ・ディランのコンサートが行われました。コンサートは2部構成の様になっており、前半はアコースティックギター一本のコンサートでした。しかし後半は、ザ・ホークス(後のThe Band)をバックにエレキギターに持ち替えた。ディランが歌っている間にも、会場内からは野次が絶え間なく飛び続けたらしい。そして最後の曲の前に客の一人が「ユダ!(裏切り者)」と叫んだ。するとディランは、「お前の言う事は信じない」「お前は嘘つきだ」と応えたエピソードは有名な話です。一年前の1965年、ニューポートフェスティバルでも似たような事が起きています。 1965年に発売された「Bringing It All Back Home」では、片面がバンドをバックにしたサウンドであったし、「Highway 61 Revisited」1966年に発売された「Blonde on Blonde」は、完全にロック色のアルバムになりました。ディランの変化を受け入れた者と、旧然のディランを支持する者がこの時期に混在していたのだろう。
この事件から30年以上経った1998年に「BOB DYLAN LIVE 1966」としてロイヤル・アルバート・ホールのコンサートが2枚組CDで発売されました。
1枚目がアコースティックで、2枚目がエレキギターによる演奏になっています。しかしこのコンサートの模様は、1970年頃に海賊版として出回っていた様です。 自分が20代前半の頃に、東京でレコード屋巡りをしていた時に偶然見付けた!
当時このエピソードは知っていたので、興奮気味に購入しました。しかし中を開けて見ると、レーベルには「SPINDIZZIE / BRUCE DILLON」。誰? 騙された! と思った。とりあえず聞いてみると、音は確かにロイヤル・アルバート・ホールのモノでした。この海賊版には、後半のThe Bandとの演奏のみが収録されています。 このレコードは、海賊版としては比較的良い音に出来上がっています。たぶんロイヤル・アルバート・ホールのライブは、正式にマスタテープとして録音されていたのかもしれません。その音源がどこからか漏洩し、海賊版として出回ったかもしれない。30年以上経ってからマスタテープをリミックスし、CDとして発売されたのではないか? と自分は思っています。 ちなみに、BRUCE DILLONとはどういう人なのか調べてみました。しかし、見付ける事は出来なかった。ただ、これと同じレーベルの付いた色々な種類の海賊版が出回っている。この人のレコードが売れなくて、レーベルが多く余ったのだろうか?
1978年 初来日武道館ライブは、自分も見に行く事が出来るはずだった。 しかし・・・
友人がサプライズのつもりだったのか、このコンサートのチケットを入手したという連絡が入った。すぐにでも休暇を取り、東京に向かいたい気持ちで一杯だった。しかし、それは不可能な状況でした。
自分は1977年に高校を卒業し、同年3月3日にOPENした「アイケーショッピングデパート」で仕事に就く事になりました。アイケーは、能代で初の本格的ショッピングデパートでした。 武道館ライブのあった日は、丁度 アイケーの一周年祭の最中だったのです。当時の記憶はあまりないのですが、ただ一つ、当時全盛期であった「ピンク・レディ」を能代にアイケーが招致した。たぶん、招待チケットが当たる! という様な企画だったかもしれない。極小都市の能代に当時のピンク・レディを招致する事は難しかったと思いますが、そこは資本提携していたニチイ(後の2001年に倒産したマイカル)の力が大きかったと思います。一周年祭は、それだけ気合の入ったモノであった。そんな状況で休みを取得出来るはずもなく、諦めるしかなかった。彼には失望させて申し訳なく思いましたが、まだ入社2年目でもあるしどうしようもなかった。 行きたくて行きたくて、ただただ悔いが残りましたが、この時は悪い事ばかりでもなかった。後日 ピンク・レディのコンサートが行われたのですが、自分がこのコンサートの警備員として動員された。
コンサートは、現在は使われていない「能代市立体育館」で行われました。コンサートホールというよりも、学校の体育館の様です。当日は敷地内に客が収まらず、道路にまで人の列が出来ました。その整理も仕事の一つでした。そしてコンサートが始まると、最前列で客の警備にあたりました。能代衆は大人しいので、コンサートが始まっても騒ぐ事もなく仕事は楽でした。おかげで、最前列でピンク・レディのコンサートを見る事が出来ました。
ボブ・ディランが帰国後、ライブアルバム「武道館」が1978年8月21日に日本限定でリリースされました。
発売されてすぐに購入しました。この聴衆の中に彼もいるんだ!
ボブ・ディランの初来日公演は「FAR EAST TOUR 1978」というワールドツアーの一環でした。そのワールドツアーの最初の国が日本でした。そこに何か理由があったのだろうか?
ボブ・ディランは、1966年7月29日にバイク事故を起こし重傷を負います。それ以降はあまり表舞台に出ず、隠遁生活を送る様になりました。アルバムを発表してもカントリー・ミュージックぽいモノや、カバー曲をレコーディングしたり、映画に出演しサントラ盤を出すなど、かつてのディランらしくない行動が多くなった。名盤「Blonde on Blonde」までが彼の第一の絶頂期で、バイク事故以降は低迷期に入った様に感じました。そんな状況の中でも作品は作り続け、The Bandと多くのデモテープが制作されました。その一部が後に「地下室・ザ ベースメントテープス」という題で、2枚組アルバムとして発売されました。
長い低迷期の後、なぜかボブ・ディランは「アサイラム・レコード」に移籍する事になりました。アサイラム・レコードでは2枚のアルバムしか発表されなかったのですが、この頃から復活の兆しが見えて来る。この時に発表された2枚組ライブ「偉大なる復活」
1974年に、The Bandとのツアーが記録されたモノです。
1975年10〜12月と1976年4〜5月、二つの時期にかけて「Rolling Thunder Revue」と銘打ったライブツアーが行われました。アメリカ国内だけのツアーでしたが、メッセージ性の強いツアーの様に感じました。そして、「FAR EAST TOUR 1978」と、毎年の様にツアーが行われる様になりました。 1974年に復活したディランは、第二の絶頂期に入った様に感じました。初来日公演は、この絶頂期に行われたライブという事になります。
FAR EAST TOUR 1978は約一年に渡るワールドツアーで、アメリカ国内を主とし、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、カナダで公演が行われました。そして、最初が日本だったのです。
日本公演は2年以上前に決まっていた? と思われる。
自分が好きなアルバムの一つ「欲望・Desire」です。このアルバムは、1975年第一期Rolling Thunder Revueの後に制作され、1976年第二期の前の1月5日に発表されました。 このアルバムジャケットの裏側に、鎌倉の大仏(赤囲み)らしきものが描かれています。初来日への暗示だったのだろうか? 当時これを見た時には「ディランは日本に興味があるのかな?」と思っていました。
現在はボブ・ディランをあまり聞かなくなりましたが、1978年の初来日公演には特別な思いがあります。友人が手に入れたチケットで、見る事が出来たかもしれない公演だったからです。今回発売された「The Complete Budokan 1978」を聞くと、自分が当時にタイムスリップして会場へ飛んで行ける様に思ったからです。 しかし、値段が・・・
The CompleteBudokan 1978とは別に「Another Budokan 1978」が発売されました。このアルバムは「AT BUDOKAN」に収録されなかった曲を抜き出したモノです。つまり「AT BUDOKAN」と「Another Budokan」を合わせれば、アルバムに収録された全ての曲を聞く事が出来ます。しかもLP仕様なので、AT BUDOKANと合わせるには都合が良い。 2枚組で6,380円(税込)は少し高いが、これ位であれば・・・・ という事で購入しました。
コンプリート武道館の様に最初から最後までの会場の様子を知る事は出来ませんが、演奏した全ての曲を知る事によって、ある程度は会場の様子が分かる。 もし、コンプリート武道館の様にしたければ・・・
Another BudokanとAT BUDOKANから、キャプチャーボードを使ってリッピングしてパソコンに取り込む。そして、取り込んだファイルを演奏順に並び替えてつなぎ合わせる。 ただ・・・
Another BudokanとAT BUDOKANには、2月28日と3月1日の演奏が混在しているので、コンプリート(完璧) にコンサートを再現する事は出来ない。でも曲のアレンジは変わらないと思うから、ほぼ当時のコンサートを再現できるのでは? と思っています。別な意味で考えると、コンプリート武道館の2月28日の演奏と3月1日の演奏は2/3が同じ曲なので、ほぼ同じ感じになるのでは? と思いました。
レコードを購入して二ヶ月程経った頃、コンプリート武道館の全曲がYouTubeにアップロードされているのを知りました。
たぶん、ディランの公式サイトだと思います。購入前に知っていれば、Another Budokanを購入する必要がなかったのでは? 思いました。実際にCDなどで聞くのと違うのは、ファイル毎に一度は途切れる事。プレミアムに登録していないと、一曲毎に間へCMが入る。それでも、LPレコードからリッピングして編集するよりも、はるかに当時のコンサートの様子を再現出来る。 このファイルをダウンロードして全曲をつなげれば、立派な「The Complete Budokan 1978」が出来上がる。しかし、基本的にYouTubeはダウンロードする事が出来ない。 ま、方法が無いわけでもないが・・・
YouTubeのダウンロードは違法になるのか? 調べてみると、YouTubeのダウンロードは規約で禁止されている様です。でも規約であって、法律違反ではない。アップロードしているのはたぶんディランの公式サイトなので、違法アップロードではない。つまり、ダウンロードして自分で楽しむ限りでは違法に問われない。 と、自分は解釈しました。 ので、その辺はグレーです。
YouTubeをダウンロードする方法は色々とある様ですが、怪しいサイトやアプリもあるのでは? と感じます。 それを覚悟で、少しやってみました。
これはどうなんだろう? かなり不安! とりあえず、ダウンロード出来て再生にも問題はありませんでした。ただ、注意メッセージが出ている以上は、何かしらの問題を含んでいるのかもしれません。 もし強行するのであれば、後はダウンロードしたファイルを編集アプリを使ってつなぎ合わせれば出来上がりです。 ドメインが「io」というのも初めて見ました。調べてみると、イギリス領インド洋地域に割り当てられているドメインの様です。 イギリス領インド洋地域とは
インド洋にある、チャゴス諸島を中心としたイギリス海外領土。人口は3500人程で、アメリカ軍の基地もあるらしい。チャゴス諸島の原住民は1967年から1971年にかけて、全て移住させられた。ここに住んでいる方は、軍関係者のみ? 何か観光地ぽい気もしましたが、色々と疑惑の話も聞く。軍基地があるためだろうか。いずれにしろ、普通の住民はいないか、極々少ないと思います。そこにつながるサイト。やはり、怪しいかもしれない。 実行する場合は、自己責任という事になります。
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以前からアンプの調子が悪く、アンプが温まるまで片側の音が出ませんでした。それでも時間を掛けると使用に問題はなかったのですが、使用途中から不穏な動きがあり完全に音が出なくなった・・・
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