ケドバタ捜索隊〜タケノコ採り

自分達が山菜を採取する場所は、ケドバタ(道端)で採る事がほとんどです。

写真の様に、普通に車が通るケドバタの藪を伺いながら山菜を探しています。それは舗装路であったり砂利道であったりの違いはありますが、基本的にはその様な場所です。少し奥に入っても、道路が見える範囲内か車の通る音が聞こえる所で山菜を採る様にしています。そのため、自分達を「ケドバタ捜索隊」と呼んでいる。

ケドバタ捜索隊は、今年もタケノコ採りに行って来ました。例年であれば6月初旬に行くのですが、今年は山菜の成育が一週間位早いと言われているので、タケノコも例外では無いと思い5月26日に行って来ました。 いつも自分達の行く場所は「鹿角市・熊取平」と決まっています。ここに通う様になって20年以上経ちますが、偶然ここを見付けた時に、かつて無い程に大量のタケノコを採取してからは毎年ここに足を運ぶ様になりました。 十和田湖周辺は良質のタケノコが多く生えているのですが、その様な場所は入山料を支払わないとタケノコを採る事が出来ません。丸一日 真剣に採取すれば十分に元は取れる金額ですが、自分達の様に奥地に入らない人にとっては赤字になる可能性が高い。そのため、お金を取られない様な場所を探していたら、熊取平にたどり着いた。

熊取平は入山料が取られないため、ここでタケノコを採る人はかなり多い。しかし、2016年5月から6月にかけてタケノコ採りの人が熊に襲われる事件が数件発生し、合わせて4人が死亡・4人が重軽傷を負った。この事件で後日射殺された熊の胃からは人体の一部が発見され、熊による人食があった事が判明した。この衝撃的な事件は、日本で記録の残る史上三番目の獣害事件とされている。詳しくは「十和利山熊襲撃事件」として wikipedia にも載っています。

前出写真に写っている道路の、300〜400m奥が熊の襲撃現場になります。最初の襲撃事件が5月20日なので、その1〜2日前にこの辺で自分達もタケノコ採りをしていた事になる。運が良かったのだろうか? ケドバタでは熊に遭遇する可能性は無いと思い込んでいるが、やはり気持ちの良いモノではないです。 その後 襲撃現場に通じる入口には柵がされ、他の道路にも柵がされる様になりました。熊取平には農場があり、人家もある。たぶん、生活道以外は全て閉鎖されたのかもしれない。事件から5年が経つが、閉鎖は現在も行われている。

事件が起こる前はこの入口前に多くの車が停まり、他の場所にも多くの車や人が入り込んでいました。しかし26日に行った時には二台しか車を見る事が出来ず、どこにも人が入っている雰囲気には見えなかった。

事件後、熊取平には2〜3年タケノコ採りに行かなかった。ほとぼりが冷めた頃に行った時からは、その収穫は皆無の状況であった。何かが変わったのだろうか? 一つは精神面があると思う。ケドバタでも落ち着いてタケノコを探す事が出来なくなった。もう一つは、同時期から土・日・祭日しかタケノコ採りに行けなくなった事。その日は入山者が多いため、自分達の様なケドバタ捜索隊にはそのおこぼれに預かる事が難しくなったのではないか。いずれにしろ、事件後から山の雰囲気が大きく変わった様に感じられた。

今年からそれが解禁になり、平日でも山菜採りに行く事が出来る様になりました。しかし、それまでの不作がたたり、何か「採りに行く!」という意気込みが足りない。ケドバタ捜索隊にとって、一番重要なのが場所の確保。捜索範囲が狭いため、他の人の入った後ではその場所の収穫が見込めなくなる。そのため、人より先に場所を確保する必要がある。 現場へは家から二時間程掛かるため、少し暗い内からの出発が必要になる。しかし当日はその意気込みが薄く、かなり寝坊をしてしまった。今更と思い、ゆっくりと朝食を食べながらの出発になった。

予定よりかなり遅れて最初の現場に着いた。毎年 下の方から順に車で移動して行く。いつもは誰かが入っているのですが、その日はその場所に誰もいなく「もう採られた後だったか?」と不安が過る。それでもとりあえず藪を覗いてみたが、収穫は三本しかなかった。しかし人の入った形跡は見えなく、まだ時期が早かったのだろうか? 人が多く居ると自分達の採る分がなくなると不安になり、人が全然いないと時期が早かったのか? と不安になる。半分あきらめの境地になり、最終目的地に向かった。

前出の写真の場所、道路の片側が竹藪になっており、その対面が牧草地になっています。牧草地の奥にも竹藪があるのですが、自分達は道路側の竹藪でしか採取しません。ただこの竹藪は、幅が100m程で奥行きが4〜5m程の狭い範囲であるため、誰か他の人が入っていればその場所はあきらめるしかない。 一番最初にこの場所を見付けた時、とても良質のタケノコを大量に採取する事が出来ました。こんな所に? と思って誰も人が入らなかったからだと思います。正に、「灯台下暗し」というものだろう。しかし人が入っている場所には、他の人が様子見に入る事はよくある事。その後は他の人の入った形跡もあり、以前ほど採れなくなりました。それでも、比較的楽に採取出来るので毎年ここへ来る様になった。

採っているタケノコは「ネマガリダケ」で、直径1〜3cm程の細いタケノコです。今回はまばらにしか生えていませんでしたが、多く採れる日にはあっちこっちに生えて飽きる事無く採取出来る。

ネマガリダケは、細い竹が密集して藪になっている。車を走らせながら、そういった藪を探すのがケドバタ捜索隊です。タケノコの太さは竹の太さに比例するので、出来るだけ太い竹が茂っている場所を探します。 藪の中を絡まった竹や蔦などをかき分けながらの採取になるが、それが体にまとわり付き身動きが取れなくなる場合も多い。それを力任せにかき分けて行くため、採取には結構体力を使う。地面に這いつくばってあっちこっちと動き回るため、方向感覚が失われやすい。それに加え、藪で周りが見通せないためタケノコ採りの遭難が多く発生するのだと思います。

2時間程の採取で、15kgくらいの収穫がありました。最初の場所で三本しか採れなかったので、最後の一ヶ所でのみの収穫です。良質の物は少なかったのですが、まぁ 満足のいく収穫であった。もっと範囲を広げて探せばもっと採れたかもしれないが、後処理の事を考えるとこれくらいが丁度良いと思った。 これらの中から形の良い物は親類などに配ったら半分くらいに減り、1〜2cmの細いタケノコしか家に残らなかった。どうせ人にあげるのであれば喜ばれる方が良いし、細くても太くても味や食感に変わりはない。ただ、手間が少しだけ多く掛かる。

山菜全般に言える事ですが、採る時は楽しいけれど後処理を考えると憂鬱になる。今回収穫したタケノコは、皮剥きに家族三人で取り掛かり三時間以上を費やした。その後で母親は、タケノコの固い所や節を取り除くのに二時間位掛かったかもしれない。結果的に、収穫した量の1/3位まで目減りしました。 それでも、処理済みのタケノコを見ると期待していた量よりも多く出来た。 タケノコは生で調理した方が出汁や風味が良く出るので、当面使う分をこの中から寄せて置く事にする。残った分は、缶詰に加工して保存して置く事にします。

缶詰用のタケノコは、一度火を通してから加工場に持ち込みます。そのため、缶詰で保存している物はいくぶん風味が失われる事になる。本当に美味しいタケノコは、旬の時期にしか味わう事が出来ない。

例年の缶詰加工は「白神森林組合」に依頼しているのですが、今年はまだ受付をしていない様でした。たぶん例年の時期の受付になると思うのですが、今年は収穫が早かったため持ち込む事が出来なかった。 そこで今年は「みちのく缶詰加工場」に依頼する事にしました。

この加工場は5月6日から営業をしていました。その存在は昔から知っていたのですが、向能代にあるため近場の森林組合の方をずっと利用していた。受付日より前に収穫したときもあったが、その時は冷蔵庫に保管して受付日を待った時期もありました。長年の習慣で他の加工場を思い付かなかった事もあるし、いつもの場所の方が安心感があったからかもしれない。 今回利用したみちのく缶詰加工場は、空缶が一缶60円で加工賃が一缶100円でした。(いずれも税込) 空缶を購入して家に持ち帰り、それにタケノコを詰めてから加工場に持ち込む事になります。そして翌日には缶詰として受け取る事が出来る。たぶん能代市内ではここ一軒だと思うので、結構切れ間無く客の出入りがありました。

今回行った熊取平では、タケノコ・ウド・ワラビの収穫がありました。例年ここでウドを大量に採取するのですが、今年は成育が早く期待した程は収穫がなかった。しかし、ワラビは思っていた以上の量を採る事が出来ました。

アク抜きをしたワラビは、すぐに食べる分をおひたし用として・・・

大半の残った分は、醤油漬けにして冷凍保存する事にしました。冷凍してもそれほど風味が落ちないため、長期保存でない限りは美味しくいつでも食べる事だ出来ます。

今年、初めてタケノコの醤油漬けを作ってみました。こちらは冷凍保存が出来ないのですが、ワラビの醤油漬けを作りながらタケノコも醤油漬けにしたら美味しいのでは? と思った。火を通したタケノコを、ワラビ用の漬汁で漬け込みました。

実際に食べてみると、ん〜・・不味くはないけどタケノコのクセが強い。火の通し方が足りなかったのだろうか? 塩漬けなどにして、アクを抜いてから漬け込むと美味しいかもしれない。

5月29日に、藤里町でタケノコ採りによる遭難が発生した事が新聞の記事に載っていた。そして、31日に遺体で発見された様です。 我々ケドバタ捜索隊に遭難の可能性は100%無いが、良質のタケノコを沢山採る事は出来ない。 少し食べて、美味しいと思えればそれで良いと思っている。

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