白神の森の「マタギ」展ー藤里町

秋田県と青森県の県境には、世界遺産の白神山地がある。白神山地は「人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が世界最大級の規模で分布」と、世界遺産登録理由に記されている。県境の白神山地であるが、面積の74%が青森県側で占められ、残り26%が秋田県側になりそのほとんどが藤里町で占められている。秋田県側に占有面積が少ないのは、白神山地の奥地まで開発が進んだためです。特に有名なのが「青秋林道」です。秋田県側では、県境までこの林道が開通されました。白神山地開発の危機感を持った青森県側によって林道建設中止の運動が起き、林道建設がされなくなった事によって白神山地が世界遺産に登録される事になった。そこには、白神山地を生活の糧とするマタギの存在も大きかったかもしれない。

マタギには特別な興味を持ち、多くの書籍を集めた。そんな中、藤里町にある白神山地世界遺産センター藤里館でマタギ展が開かれた事があった。その時の様子を自分のブログに書き込んだので、それをインポートしました。

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白神の森の「マタギ」展 が、「白神山地世界遺産センター藤里館」で2019年3月1日〜3月31日まで開催された。

等身大のマタギが、入り口に展示してある。現在はこの様な格好で猟をする方はいなく、猟友会の方々と同じ格好で猟をするためマタギとは見分けはつかないと思う。 秋田県では「阿仁マタギ」が有名で、鳥海山麓の百宅地区に「鳥海マタギ」がいると聞いた事がある。その他にも、山間部の集落にはマタギが存在していた様ですが現在はどうなんだろう?

藤里町にも「金沢マタギ」が存在していた。

藤里町藤琴金沢集落は、白神山地世界遺産センターの数km北側にある。金沢マタギが活動していたのは大正時代までで、大正末期には仲間が次々となくなり、新しい人が入らなくなった。そのため、昭和に入ってすぐに解散したとされている。 藤里町には、「太良鉱山」があった。1613年から鉛が採掘された記録があり、それから330年以上続いた鉱山です。また藤里町は森林資源も豊富であったため、不安定で低収入のマタギの生活よりも、安定した収入のある仕事に就いた人が多かったのではないだろうか。そのため、マタギの文化が消えたのかもしれない。

金沢マタギにも巻物が残されていた。巻物は各マタギごとに存在し、先祖代々から受け継がれている物です。現在の狩猟許可書の様な物だろうか。巻物には伝説を含め系統・流派がある様だが、巻物には「萬事万三郎」と書かれているので日光派だろう。

マタギの装備に「ナガサ(山刀)」がある。

写真の物は、金沢マタギが使用していたモノです。数十年前に、阿仁マタギ「故三代目西根正剛」さんからナガサを購入した事がある。

※ナガサについては

マタギ山刀
マタギとは狩猟を行う集団の事です。秋田県にはマタギの集落が多く「阿仁マタギ」は特に有名です。二十年以上前に、現役のマタギでもある「故三代目西根正剛」からマタギ山刀を購入しました。色々と使い易い様にしたつもりですが、一般的には実用的に程遠い存在かもしれない。

阿仁マタギは「フクロナガサ」という物も使われている。他のマタギでは普通のナガサしか使われていなかったと思い、金沢マタギもまた普通のナガサであった。フクロナガサは、阿仁マタギ独特の道具なのだろうか?

会場には、熊の毛皮の敷物が展示されてあった。お触りOKだったので撫でてみたら、ゴワゴワした毛であった。少しオーバーかもしれないが、体から箒が生えている様な硬い毛であった。

こんな爪で襲われたら、人間なんてひとたまりもない。

マタギ展が開かれる事を知って行ってみたが、内容はかなり貧弱なモノであった。唯一の収穫は、藤里町にもマタギが存在してあった事を知った事。白神に関しての展示と思うので、金沢マタギの歴史等の企画であったのかもしれない。 白神の森の「マタギ」展の企画では3月16日に 吉川さん の講演があり、それに合わせての見学であった。
講演は一時間半弱行われ、その全てを録音してきた。まとめてから、後でその感想を書きたいと思います。

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当時の吉川さんの講演は、藤里館展示場の一画で行われた。 自分はマタギ展の展示物を見てから講演を聞こうと思い、一時間以上前に会場に着いた。しかし、マタギ展の企画自体は貧弱であったためすぐに見終わり、一時間近く講演を待つ事になってしまった。会場は狭く、パイプイスが20〜30脚位設置されていた。その場所にはまだ誰も来ておらずそのイスに座って待っていたが、開始時間が近付くにつれて人が集まり始めた。主催者側の想定外だったらしく、急遽イスが追加された。結果的にはそれでも足りず、立ち見の人も多くいた。たぶん、100人以上は集まったかもしれない。マタギという馴染みのない講演だったが、予想以上の人が集まったと思う。 その講演を録音していたので、それをまとめた物を先のブログの続きとして書こうと思ったが、その録音ファイルを何かの拍子に削除してしまった。そのため、それに関しての事を書けなくなってしまった。

講師を務めたのは吉川隆さんで、青森県の「赤石マタギ」21代目シカリ(リーダー)で「熊の湯温泉」の宿主でもあります。 青秋林道建設反対運動では、自然保護団体の先頭に立った方です。吉川さんについては、下記のURLで色々と書かれていた。

淵はなぜ消える?第6話 ダムと白神山地のマタギ・シカリ ~その1~ 山本喜浩会員
東京鮎毛バリ釣り研究会の広報サイト

また「マタギに学ぶ登山技術」では、記事中の実演者として出ている。

講師としては慣れていないのか、主催者側が進行して吉川さんが語るという感じで行われた。新しく知った様な事は無かったが、主催者側が白神山地の事を話すと何か口を濁して話をしていた様に感じた。秋田県側の白神山地への対応に遺恨を感じている風に見えた。白神山地を活動の場としている赤石マタギにとっては、当然の事かもしれない。

  吉川さんが講演の際に持参していた書籍「叉鬼と山窟」です。その中に、吉川さんの父か祖父が載っている事を話していた。

 この本は自分も持っているが、まだ読んでいなかった。この表題にある「山窟(サンカ)」、これがマタギと共通する部分がある様に思う。前に、能代山本でも山窟が居た様な事を聞いた事があった。今回のマタギ展で金沢マタギの事を知り、山窟の存在とマタギと関係があるのかすごく興味を持った。資料が存在するのかは分からないが、調べて見たいと思った。

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