能代の老舗菓子店「松雲堂」が、9月25日に事業停止し自己破産申請の準備に入ったと北羽新報に載った。記事によると「人口減少などにより売上が落ち込み、コロナ禍で経営が更に悪化。そのため、資金繰りがつかなくなった」と、書かれていました。負債総額は、4,000万円。
松雲堂は昭和6年創業の老舗菓子店で、柳町に本店と工場を構えて和・洋菓子を製造販売をしていました。ただ、自分的には和菓子屋のイメージが強い。本店の他に「アクロス・いとく能代ショッピングセンター」にもテナントとして入っていました。代表の塚本正さんは、平成2年から柳町商店街振興組合の理事長を務めており、今年6月に再任されて7期目に入ったところだった。いわば、能代の顔役でもあった。
去年の6月には「東雲羊羹」を製造販売していた「熊谷長栄堂」が、186年の歴史に幕を下ろした。
東雲羊羹は能代の代表銘菓であったが、後継者がいなくて製造する事が出来なくなった。その後、親族によって再開されたが、やはり高齢化によって製造継続が困難になった。
去年の4月にはセキト上町本店が店を閉め、バイパス店で製造販売する様になった。 その前の1月には「たきや」が廃業をした。こちらも、後継者がいないという事で廃業を決めた様です。
廃業した店はいずれも和菓子が主体の店で、業績が良かったとは感じられない。能代名物の東雲羊羹でさえも、昔ほどは売れなくなった様に思います。 自分が勤めていた頃、盆・正月の帰省時には東雲羊羹の在庫が無い状態でした。手造りであったため、一日に製造出来る量が限られていたためでした。そのため自店で販売する量しか作れず、量販店までは流通しなかった。なので、盆・正月の1〜2ヶ月程前から少しづつストックしておかないと繁忙期に販売出来なかった。それがいつの頃からか、ストックをする必要がなくなった。製造量が増えたためではなく、販売量が減ったためです。 たきやにしても、通常は店に客がいるようには見えなかった。
思うに、消費者の嗜好により和菓子の消費が減っている様に思います。昔は洋菓子類の種類も少なかったから、消費者の選択肢も少なかった。しかし今では、地方にいても有名パティシエの洋菓子を取り寄せする事が出来る。洋菓子の消費が増えればその工房も増えるため、必然的に和菓子の需要が落ち込む事になる。松雲堂の場合も、そういった要因が積み重なって来たのではないだろうか。
近年の物価上昇も影響があっただろう。全ての物価が上がる中で、菓子の原料となる物価が特に上がった様に感じます。単純に商品価格へ転嫁できれば良いのですが、これまで通りの採算で考えるとかなりの値上げになるのではないだろうか。最近では、主食である米の値段が急激に上がった。しかし、減らしたり食べないわけにいかないので食費の支出は増える事になる。最低賃金・全国最下位の秋田県に、この物価高は受け入れられない。当然、支出が増えれば減らさなければならない支出も発生する。それが、嗜好品への支出だろう。コロナ禍以降も回復出来なかったのは、そういった要因があったかもしれない。
熊谷長栄堂の熊谷健さんには子供がいなかったため後継が途切れたのですが、たきやにも子供がいなかったのだろうか? もしかしたら、今後を見据えて継がせなかったのかもしれない。と、自分は思いました。
10月26日に、アクロス・いとくショッピングセンターに行って来ました。松雲堂の場所を見ると、まだ看板や什器がそのまま残っていた。そういうのを見ると、何かさびれた感じがする。いとくは県内でも有数の企業である事から、早々に売場を作り変えていると思っていた。報道から一ヶ月以上経つので、何か出来ない理由があるのだろうか? あと、隣にあった「ラグノオ」も撤退していた。
いとくとの提携を解消したのかと思ったら「いとく南店」では営業を続けています。アクロス店だけが閉店した様です。
最近「ショッピングモール・アクロス」からの撤退が多い。
つい最近では「ケンタッキー・フライドチキン」が撤退した。
知らない内に「GEO」も撤退していた。
少し前には「ホームセンター・ハッピー」が撤退した。 この場所にはハッピーが出来る前に「ホームセンター・サンデー」が有りました。しかし、2021年11月27日に「イオンタウン能代」が開業するに伴い、イオンの方へ移転しました。サンデーはイオン系列である事から、そうなったと思います。居抜きの感じで入ったハッピーですが、2年間も営業しただろうか? 実際に、他のホームセンターよりも客の入は極端に悪い様に感じました。
ショッピングモールの中に空き店舗が目立つと、さびれた感じを受ける。撤退する側も、採算が合わないから閉店したと思うが・・・・ その原因となるのが、アクロスから2km程離れた場所に進出したイオンタウン能代の影響もあるだろう。 何十年も前から能代市では誘致を進めて来ましたが、イオンから正式な回答があったのは7年程前。
その間に当初の計画よりかなりの売り場面積が減らされ、すっかり魅力のないショッピングセンターが進出する事になった。売場に魅力がなければ、県内各地からの集客は望めない。能代市で目論んでいたほどに集客は無く、イオンタウン能代の客入は良いとは思えない。そのせいか、空きテナントが目立つ。能代の狭い商圏内での食い合った結果だったと思います。 ただ、ハッピーの場合は少し事情が違って、イオンタウン能代の近くに進出した「パワーコメリ」の影響が大きかったと思います。元々 具合の悪かったところに、致命傷を負った。
松雲堂倒産の事が報じられた新聞の一面記事。 近い将来、能代市の人口は半減する見通しです。
新聞の死亡広告です。「柳町・塚本正」 この広告を見た時、どっかで聞いた事のある名前だと思っていました。それが、この記事を書きながら「あ〜・・」と思った。 市の有力者であれば何かしらの新聞記事になるはずだし、柳町商店街振興組合による死亡広告が載るはず。新聞内を探したが、それらは見えなかった。 という事は、同姓同名だろうか・・・・・
友人に聞いた所、亡くなった塚本正さんは松雲堂の社長 本人であった様です。 という事は、自分の死期を感じた社長が、今後の経営の立て直しは難しいと思ったのだろうか? そこで、自分が生きている内に整理を進めたのだろうか?
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