昔は「マタギ村」という集落が多くあった。 マタギとは狩猟を行う集団の事です。しかし、狩猟だけを生業としている事は少なく、多くは農閑期に狩猟を行っていたと思います。 マタギには、居住地区周辺で狩りを行う「里マタギ」と、遠方にまで狩りに出掛ける「旅マタギ」があった。 秋田県にはマタギの集落が多く「阿仁マタギ」は特に有名です。その最大の特徴は、旅マタギである事です。阿仁マタギの活動範囲は広く、東北はもとより北は北海道・樺太、南は上信越国境から立山黒部そして奈良方面まで及んだとされています。その狩りで得られた鳥獣の毛皮や熊の胆を売る事で、マタギとしての収入を得ていた様です。
マタギの「シカリ」の家、つまりリーダーには「山立根本之巻」という巻物が代々伝えられて来ていた。
この巻物にはいくつかの流れがあり、阿仁マタギには日光派の物が多いとされている。 日光派は、神話の頃の「万事万三郎」が始祖とされており、その人が日本全国の狩猟を行う事が許されたとされていた。つまりこの巻物は、どこでも狩猟を行う事の出来る「狩猟許可証」という事になるだろう。そのため免許証と同様、狩りに行く時はこの巻物を携帯する事になる。
阿仁マタギは収穫物を行商に出る事も多く、中には旅先で婿養子になったり、マタギのいない所に移住してその土地にマタギ文化を伝えた例も多かったとされている。 マタギ文化には、マタギの言葉もある。先程のシカリ(リーダー)の様に、秋田弁ではなく秋田県人にも分からないマタギ独特の言葉です。たぶん、日光派で伝えられて来た言葉かもしれない。
マタギの狩猟道具に「ナガサ」という物がある。「山刀」と表記されるが、鉈とナイフの中間の様な道具です。数十年前にアウトドア用品店でこのナガサを販売した所、全国的に有名になった事があった。 このナガサについて、2017年の自分のブログに書き込んだのでそれをインポートしました。
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20年以上前の事ですが、山刀を購入しました。
阿仁町 西根打刃物製作所 故三代目西根正剛 作
明治時代に、初代が新潟県の刀鍛冶に師事し現在に伝わる。三代目は、現役のマタギでもありました。 「叉鬼山刀」と書いて「マタギナガサ」と読みます。
自分が購入したものは「フクロナガサ」といわれる物です。 赤◯印の所に穴が開いていて、手で握る部分は空洞になってます。この空洞の部分に長い棒を刺して、釘などで固定する為の穴です。普段はナタや包丁の様に使い、いざという時のための利用法です。いざというのは、熊狩りの時に槍の役割として使う場合です。そういう意味では、フクロナガサというのは自分にとってオーバースペックな物かもしれません。自分が同じ事をしたら、熊に歯向かう前に殺されてしまうだろう。
自分が購入したのは7寸の物で、当時でも20000円以上したと思う。 阿仁町の工場に伺った時、亡くなった先代が丁度休憩中で色々話を聞く事ができました。身振り手振りなどで道具の使い方や、熊との戦い方なども教えて頂きました。でも、出来れば熊とは出会いたくないなぁ〜。 話の中で、能代営林署でも西根さんのナガサが利用されているというが、今は分からない。 フクロナガサ本来の使い方は上記の通りですが、槍として使う気はなく実用的な飾りをしてみました。
握りの部分には、革紐を巻きました。 何を巻けば良いのか迷いましがた、革が一番良いだろうと思いました。しかし、どこにも革紐が売っていないのです。比内町に馬具屋があったのを思い出し行ってみましたが、扱ってなかった。それから流れ流れ結局、青森県の十和田市にたどり付きました。 今だったらインターネットの検索で探す事が出来るが、当時はそんな便利な物は無かった。 この革紐はレザークラフトを行っているカバン屋で見つける事が出来ました。店の方に事の一部始終を話したら、ずいぶん安くしてくれました。レザークラフトを行っている所だったらどこでも購入出来たかもしれないし、秋田市内にもあったかもしれない。現物を見るまでは、思いも付かなかった。
ナガサの鞘には、登山用のザイルを巻きました。もし何かあったらと思って巻いたのですが、もしもの何かって何だろう? と改めて思う。 本来は熊を狩るためのナガサですが、すっかりファッション的なナガサになってしまった。 当時はマタギという物に興味を持ち、書籍などもずいぶん読みあさりました。そのため、マタギと同じ物を持ちたいというのが、当時の一番の気持ちであったのかもしれない。
阿仁町のマタギは「根子」が発祥とされ、打当地区がマタギの里として有名です。そこでマタギのシカリをしていた方の家から、自分の親類の家へ嫁になって来た人が居る。最近知った事で、もっと前に知っていればその方の実家に遊びに行きたかった。
当時は登山に夢中になっていて何度かナガサを携帯した事があったが、そのあとに色々と問題を感じた。 一番の問題は「銃刀法違反」で、刃渡りが21cmあるので十分該当する。仮に検問や違反の時に車の中を見られた時、熊からの護身用ですと言っても通用するはずがない。やはり一般的には、実用的に程遠い存在なのかもしれない。そのため、ず〜と仕舞いぱなしでした。 さっき見たらサビも出始めており、包丁にでも使おうかと思い始めている。 西根打刃物製作所では、一代保証というのを行っている。代の続く限りは、無料で修理をするという保証です。正に、Zippoの様な保証です。一度、問い合わせをしようかと思っている。
自分の登山スタイルは「加藤文太郎」にあこがれ単独行が多い。
単独行に加え、修験道などの現在はあまり使われていない登山道を利用する事も多い。そのためナガサを持った時には、何となく登山行に安心感がある。この安心感は、真っ暗な闇の中で焚き火の前に立つ安心感と似ている様な気がする。
しかし熊と遭遇した場合、自分にとってマタギ山刀は何の役にも立たないと思うが・・。
気持ちだろう。
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