秋田市土崎にある「いとく土崎みなと店」で、熊が店内に籠城しているというニュースが流れた。ニュースでは、11月30日午前6時20分頃 開店に向けて準備をしていた40代の男性従業員が、店に侵入して来た熊に襲われて頭に傷を負ったらしい。店内には従業員が21人居て、バックヤードから出て来た別の従業員が怪我をしている男性を店の外に連れ出して避難をした様です。男性を見付けた時には、2m程先に体長約1mの熊がまだ居た様です。 その状況では、かなり怖くパニック状態であったと想像がつく。男性は全治一週間程の軽傷であった事。その後も熊は、店内に居座り続けた事。それらのニュースは、全国版の生中継で報じられていた。それだけ特異な事件だった。 侵入経路は不明の様ですが、おそらく搬入口から侵入したと思います。早朝に生鮮食品などが搬入されるため、入口は全開であったと思われる。生鮮品の匂いにつられて侵入したのだろうか?
いとく土崎みなと店(赤丸印の辺り)は、住宅密集地にあります。当然ながら、熊が生息出来る様な環境ではありません。では、熊はどこから来たのか? 地図上で、東に5km程離れた場所に山があります。来るとしたら、その場所しか考えられない。その途中には住宅や幹線道路があります。その間の目撃情報がないという事は、闇に紛れて夜通し歩いて来たという事だろうか?
翌12月1日になっても、熊は店内に居座り続けた。店内を外から見ると、売場にあった肉などが食い荒らされている様子が見られた。 店の入口に箱罠を仕掛けたが、入る様子はなかった。もっとも、店内には食料がたくさんあるので、箱罠のエサには目もくれないだろう。 その後ドローンで店内を捜索したが、熊の姿は発見出来なかった。そこで、熊はバックヤードに居る可能性が高いとみて、売場とバックヤードをつなぐ通路2ヶ所に箱罠を移動し他の通路は閉鎖した。
翌12月2日午前4時すぎに、設置した箱罠のセンサーが作動した。そして、午前8時過ぎに箱罠に入っている熊を確認した。熊は麻酔で眠らされ、午後1時半頃に罠ごと店の外に運び出されました。
その後どうするのか分かりませんが、おそらく殺処分になると思います。去年だったか、罠に掛かった熊を殺処分したら多くの苦情が来たらしい。 かわいそうだ! という思いからだろう。しかし、今回の捕獲された熊は肉の味を覚えた熊。これをまた野に放つと、肉を求めて里に出て人を襲う可能性が高くなる。一般的な熊はパニックや子を守るために人を襲うが、稀に肉の味を覚えて人を襲う人喰い熊になる個体もある。
今回の事件で、被害者は軽傷で済んだ不幸中の幸いであったけれど、店側は甚大な被害を受けただろう。少なくても3日間は営業が出来なかったため、一千万円以上の売上を逃した事になるだろう。いくつかの什器や店舗が壊され、食べ散らかされた様子もある。多分、糞尿もあっただろう。通常通り開店するには、それらの修理や消毒も必要と思われます。そのため、熊が捕獲されたからといってすぐに開店する事は出来ないだろう。閉店期間中に期限切れや、劣化した商品もあっただろう。それらを全部撤去して、売場を作り直す必要がある。それらの損害も、かなり大きいと思います。
いとくでは、多分 損害保険に入っていると思います。閉店期間中の売上補償や物品の補償などを、自然災害であれば補償されると思います。しかし、熊による被害の場合はどうなんだろう? レアなケースであるので、補償の対象になるのだろうか? 加害者に損害請求が出来るが、熊には支払い能力がない。「ならば、体で払ってもらおうか!」と言った所で、大した金額にはならない。肉・皮を売った所で、せいぜい数万円だろう。それを業者に依頼すれば、ほとんど手元には残らないはず・・
能代の市街地にも、11月26日に熊の出没がありました。
26日午後1時15分頃に、能代高校のグランドで体長約50cmの熊一頭が目撃されました。
(能代高校正面入口・グランドは校舎の裏側) 能代高校は田園地帯に建つ学校で、熊が生息していると思われる山まで数百mの距離があります。近くでも度々熊は目撃されているので、特異な現象ではないと思います。ただ・・・・
能代高校の正面向かいには「アクロスショッピングモール」があり、平日でも人や車通りがかなりあったと思います。土崎の場合は早朝でしたが、能代の場合は日中であった事が違う所。アクロスの核テナントが、いとくというのも因縁深いねぇ〜・・
高校で目撃された熊は、隣接している住宅地の方へ逃げて行った様です。 その後の熊は、午後4時頃に大瀬侭下地内の各所で色々な人に目撃されている。
国道7号線・能代南バイパスで、能代で一番交通量の多い場所。 丁度この場所、スーパーやドラッグストアーが立ち並ぶ中で、各施設や国道を横断する熊が目撃された。午後4時頃であれば、かなりの車が行き来していたはずです。 午後7時頃には、能代二中グランドでも目撃情報があった。という事は、能代旧市街地に向かっている?・・・ それから一時間後に、西通り町で目撃された。暗い闇の中であり、その後どこに向かったかは不明。
目撃情報によると、体長は50cm〜1m50cmまでの大きな幅があるが、目撃されたのは同じ個体であったと思われます。熊までの距離や角度、また目撃者の感覚によってその大きさは変わると思う。もし50cm程度の熊であれば今年生まれた子熊で、親とはぐれてパニックになっていた可能性もある。親熊であれば、冬眠前の栄養を蓄えるためにエサを求めて出て来た可能性がある。最近良く言われる「アーバンベア」と呼ばれる熊です。それらは、市街地に出没する事も珍しくはなくなった。
人里に熊が出没する理由は、山に食料が乏しい場合が多い。しかし、今年は山の実が豊作になると予測されていました。そのせいか今年の熊の目撃情報は、去年・一昨年よりも少ない様に感じていました。それでも、いくつかの目撃情報があった。つまり、里に居着いた熊・アーバンベアという事になります。 熊だって、楽な生活を送りたいだろう。人里の近くで暮らしていれば、楽に美味しい物をたくさん食べる事が出来る。その事を覚えてしまった熊なのだ。その様な熊は、捕獲して山に戻してもまた人里に帰って来る。そのため、アーバンベアは殺処分する必要がある。
熊に対しては別の問題もあります。それは、銃の使用に関してです。市街地では、原則として銃は使用できない。今回の様に屋内であっても、射殺する事は出来なかったと思います。獣害駆除の場合でも、警察官の許可がなければ銃の使用が出来ない事が問題となった。そのため北海道では、猟友会が獣害駆除をボイコットした。北海道のヒグマは、本州のツキノワグマとは性質が全然違う。秋田県でも同じ様な問題が発生し、結果として猟友会の二人が怪我を負った。事件の少し前に環境大臣が秋田県を訪れ、その問題を持ち帰った様です。今後は議論が進むかと思います。
その後のニュースでは、いとく土崎みなと店で捕獲された熊は麻酔状態で電気ショック死され、焼却処分されました。それを知った人々から、またも多くの苦情が寄せられた様です。しかし、正当性を感じるのであれば、毅然とした態度を取る必要がある。無知な者にはしっかりと説明をして、説教をする必要がある。それらが業務に支障が出たり、脅迫じみた事であれば警察に通報する必要がある。いわゆる「カスハラ」に当たるのでは・・・
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