熊が人を襲う

2019年度 18,314件、前年度 12,809件。 この数字は、日本全国での熊の目撃情報です。ちなみに2020年度は、8月現在で11,112件ある様です。

2019年度 140件・157人、前年度 51件・53人。 この数字は、熊によって人が襲われた件数と人数です。 2020年度8月現在は、56件・60人です。 これらの数字は、環境省の「クマ類の出没情報」及び、「クマ類による人身被害について」より引用しました。

熊が人里に出て来る大きな原因は、山のエサ不足によって里にエサを求めて出て来る事が多い。環境省では、熊のエサとなるブナ・ミズナラ・コナラの「堅果類着花結実情報」を出している。それによると2017年は豊作・並作になっていた所が多かった事が分かり、熊に取って良い年であった事になる。しかし、2019年から凶作が多くなり、2020年は大凶作の様に見える。そのため、去年・今年と熊の出没情報が多くなったのだろう。 熊に限らず野生動物というものは、エサが豊富になると多くの子供が生まれる。去年・今年と熊の目撃情報が多いのは、2017年の豊作によって2018年に多く生まれた子熊が成長し、親から離れて行動を始めたからによるものだろう。個体数が増えているから、山にエサが足りないと人里に出て来ざるをえなくなる。

熊の出没に関して、例年と違う行動になっている。 石川県では特にその傾向が強い様に感じ、今日も1人が襲われ今までに12人の被害があった。 10月7日に、小松市中心部の住宅街で女性が熊に襲われケガをしている。14日には小松市の小学校で熊が目撃され、16日には白山市で4人がケガをした。その後その熊は射殺されたが、現場はショッピングセンターが近く人の往来の多い所。19日には加賀市のショッピングセンターで、商品搬入口から熊が施設内に侵入した事がカメラに映っていた。そのため施設内に居た従業員は避難をし、その日は休業になった。その後その熊は施設内で射殺されたが、そのショッピングセンターは駅から100m程の市街地にあります。

能代山本でも、毎日の様に熊の目撃情報が地元紙の記事に載っている。しかし、その多くは道路を横切ったり田畑で目撃される事が多い。人が襲われるにしても、山菜採りで出くわしたり農作業中に襲われる事が多い。 市街地に出没するのは、親離れしたばかりの若い熊が多いのではないだろうか? 新世代の熊が増えているという事を聞く。 熊は本来、山奥で暮らしているものだが、新世代の熊は里山で生活をしている。人里にはエサが豊富にあるので、それを覚えてしまった熊だ。人馴れしているため人を怖がらず、いつでもエサを食べる事が出来るため冬眠をする必要もない。そういった熊が多くなると、冬でも人が襲われる可能性が高くなる。

10月7日正午頃に藤里町藤琴で83歳の女性が熊に襲われ、頭蓋骨骨折の大ケガを負った。

現場は、藤里町役場から約200m離れた住宅密集地です。過疎化の進んだ藤里町とはいえ、近くには繁華街もあり人や車の行き来もそれなりにある所です。現場から100m程離れた場所には保育所もある。

熊は藤琴川を渡って、対岸から侵入したと思われる。

  

川を渡った草薮には、何かが通ったと思われる獣道の様な筋が見える。(獣道とは限らないが、草が押し潰された様に見えた)

今回、熊が通ったと思われる場所は草が刈られていた。足跡などから、この場所から町に侵入したと断定出来た様です。

そして、草を刈った延長の先に現場付近が見える。川から堤防に上がり、住宅の空地を抜けて現場に向かったのだろう。

被害者を発見した人は、自宅で草むしりをしていた時に動物のうなり声が聞こえたという。そのため周辺を確認すると、顔が血だらけの女性を発見したという。現場には女性が採取した栗が散乱しており、近くに栗の大木があった。熊も栗を食べに来たのだろうか?

現場対岸の堤防では熊の足跡や糞が見つかっており、高台の斜面には熊が上り下りした跡も残っていた。

地元猟友会が出て熊が通ったと見られる場所に捕獲おりを設置した(写真の斜面の上辺りと思われる)が、まだ捕獲や射殺された話は聞かない。

そして、

熊に襲われてから一週間後に、女性が亡くなった事が報じられた。そして新聞では、社会面のほぼ全面を使ってこの事が記事として書かれていた。 能代山本では、熊に襲われての死者は初めてであった。 秋田県内における熊による死亡事故は、2017年に発生して以来3年4ヶ月ぶりの死亡事故になる。 1979年から県内で14件の死亡事故が発生しているが、その全てが山菜やキノコ・タケコノ採りの最中に出くわしての事故であった。やはり住宅地での被害は異例という事になる。

藤里町には、多くの熊が生息しているだろう。2〜3年前に、自分も素波里ダムの近くで熊を目撃した。山菜採りに向かう途中で、道路を歩く子熊を見た。たぶん、その年に生まれた子熊だろう。こっちに向かって来たが、車に気付き走って戻り藪の中に消えて行った。たぶん近くには親熊が居たと思うから、確認もせずその場から走り去った。熊との遭遇は珍しい事ではなくなっている。 熊が通ったと見られる延長線上には白神山地がある。藤里町には大正時代末期まで、熊狩りを生業とする「金沢マタギ」が存在していたとされている。しかし、新しい人が入らなくなったため、昭和に入ってすぐ金沢マタギは解散した。たぶん、熊が獲れなくなってマタギという生業をやめたというよりも、安定した収入を求めて鉱山や林業に就く人が増えたためだろう。不安定で低収入のマタギを続けていく人がいなくなったためだと思う。マタギが存在してたという事は、昔から多くの熊が生息していたという事になる。

その後の検証から、熊は襲う直前に水路に居たとみられている。その水路の階段部分から上ろうとした際に、ばったりと女性と出くわしたかもしれない。もしくは、女性が歩いて来る事に気付きやり過ごそうと水路に隠れたが、近づいて来たために攻撃をしたのではないかと考えられている。 女性を襲った後に栗の入ったバッグを物色した形跡がないため、「逃げるための攻撃」だったのではないかと考えられている。 今回の熊は足跡が小さく若い個体の様なので、勝手が分からず住宅地に迷い込んだ可能性もある。 その後 捕獲されない事を考えると、熊にとっても今回の経験は恐怖となり山の奥に逃げ戻った可能性もある。そのためこの個体は、今後町に出て来る事はないだろう。

今回の事件は偶然だったのだろうか? たぶんこの先にも、同じ事をする個体は出現するだろう。住宅地に熊が寄り付かない何らかの対策をしなければ、また同じ事が起こる可能性は高い。

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