ぶりこ

ハタハタの最盛期は11月下旬〜12月中旬でその時期はとおの昔に過ぎてしまったが、店頭でハタハタはまだ売られている。ただその産地は県外産で、ハタハタは回遊魚である事から秋田県沖にはもう存在していないと思う。
秋田県民はその最盛期にハタハタを狂喜乱舞して購入するが、その時期を過ぎると急に冷静になる。最盛期以降もハタハタは出回っているが、購入する人をあまり見ない様に感じる。 その原因は「ぶりこ」にあると思う。

ハタハタ漁には二種類あって、沖合で獲る漁と沿岸で獲る漁がある。
沖合漁は沖にいるハタハタの群れを底引き網で獲る方法だが、沿岸漁は産卵のため沿岸に寄って来たハタハタを獲る方法です。この沿岸漁の事を「季節ハタハタ漁」と呼んでいる。
沖合のハタハタも沿岸のハタハタも同じ個体であるが、季節ハタハタ漁で獲れたモノの方が少し値段が高くなる。それはぶりこの質によるものだろう。
産卵のため寄って来たハタハタのぶりこは成熟しているが、沖合で獲れたモノには未成熟のものが多い。そのため、ぶりこの食感が全然違う。 成熟したモノは、粒がプチプチして歯ごたえが良くドロっとした粘液で覆われており、それがぶりこの旨みだと思う。
ぶりこ、つまりメスの割合が多い程100g当たりの単価が高くなる。

オスとメスとでは、その値段に大きな差がある。ただ、魚自体の味はオスや沖合の方が美味しいとされている。それは、卵に栄養を取られ身が痩せるためだろう。同じ事が鮭にも当てはまる。産卵のため遡上して来た鮭はブナ鮭と呼ばれ、その身はボソボソで油が抜け切って不味くなる。イクラに栄養を取られ、何も食べずに遡上するため。
イクラと同様、ハタハタもぶりこが主役になっている。
ハタハタは淡白で飽きのこない魚だ。そのため、一人で10匹以上食べる方もいると思う。
ハタハタは火の通りが早いので、焼き過ぎには注意が必要だ。小さい魚であるから、焼き過ぎると身はボソボソになりぶりこの粘液が失われる。ぶりこを噛じった時のジュルジュル感も、ぶりこの美味しさだと思う。ただハタハタには寄生虫が多いので、その加減が難しい様に自分は感じる。

ハタハタは海藻に卵を産み付けるが、それが外れて浜に打ち上げられるモノも多くある。
ハタハタが獲れなくなってから、このぶりこを人工孵化させているという事を聞いた事があるが、今はどうなんだろう? こういった事からだろうか、「浜に打ち上げられたぶりこは、拾ってはいけない!」 という規則があると記憶している。
昔、ハタハタが木箱で販売されていた頃、外れたぶりこがハタハタに混じっている事があった。それを焼いて食べた事があるが、固くて食べられるモノではなかった。
10年以上前の事であるが、青森県の魚屋でこの拾ったと思われるぶりこが袋詰にされ販売されていた。青森県民は、これを食べるのだろうか?何か、調理法があるのだろうか?
青森県民は変わったもの(変なものと書くと角が立つ)を食べるという思いが自分にある。一番異様に感じたのは、サメの頭がゴロゴロと店頭に並んでいる事。サメは人相が悪いので、特にそう感じた。


※食用になっているのはアブラツノザメ

サメ食の食文化が全国的にどの位なのか分からないが、青森県では頭まで食べる事から、かなり深いものであると思う。
秋田県では全域で食べられているか分からないが、能代では「アブラツノザメ」と「モーカザメ」が販売されている。

自分の家ではこれを、刺身・ナマス・照り焼きにして食べている。自分はその中で、刺身が一番美味しいと思っている。他の魚には無い食感と、トロッとしているがしつこく無い味が良い。少し歯ごたえがあるので、薄く切る方が良い。この身を焼くと、反対に食感が柔らかく歯ごたえが失くなる。
能代では、サメの頭を販売している所を見た事がなく、廃棄しているだろう。
青森県では、サメの頭を使った料理を「サメのすくめ」というらしい。
自分の母親が子供の頃にこれを食べた事がある様で、魚屋からサメの頭を貰い作ってもらった事があった。頭を丸ごと煮込み、そこから身をほぐし冷やすと「煮こごり」になる。何味であったか忘れたが、自分の口には合わなかった。ただ、コラーゲン豊富で体には良いと思う。母親もうろ覚えで作ったから、本場の味とは違うかもしれない。

秋田県では見る事がないが、「どんこ」という少しグロテスクな魚を青森県ではよく目にする。あと、「カメノテ」もよく見かける。これは食べれるのか? と思ったが、これはすごく美味しいと自分は感じた。
「ゲテ食い」と思うモノが、全国には食文化としてあると思う。
その中で、「イナゴの佃煮」や「はちのこ」は有名だろう。どちらも食べた事は無いが、食べたいとも思わない。美味しいかもしれないが、食べるには大きな勇気が必要だ。
「鉄腕ダッシュ」という番組で「ヌタウナギ」が出る事がある。
その容姿から、食べている地域は少ないと思う。番組では、ヌタウナギの加工法を秋田県男鹿で教わったという。秋田県の食文化であると思われがちだが、男鹿の一部の地域でしか食べられていないと思う。
男鹿では「棒アナゴ」という名称で販売されている。男鹿市内のスーパーで販売されているのを見た事があるが、その陳列量は少ない。飲食店でもメニューに並んでいる所もあるが、時価と表示され日常的な食材でないと思う。 一度、その飲食店で棒アナゴを食べた事がある。番組では美味しいと言っていたが、自分の口には合わなかった。棒アナゴがヌタウナギである事を知ったのは後の事で、もしそれを知っていたら絶対に食べなかったと思う。

上がヌタウナギで、下がキタクロヌタウナギという種類です。
2017年に、秋田県沖でヌタウナギの調査が行われた。その調査により、棒アナゴはキタクロヌタウナギで、ヌタウナギやクロヌタウナギとは別種である事が、DNAの解析により分かった。

能代では、昔から「キンダケの親」と呼ばれているキノコがある。
特に珍しいキノコではなく、「カキシメジ」という毒キノコの事であると知ったのは数年前の事です。

キノコを一度ゆでこぼしてから、塩蔵する事によって毒気が消える。それを油炒めにして食べているが、とても美味しい。能代周辺にキノコ採りに行くと捨てられている事から、能代だけで食べられているのかもしれない。

秋田県では食べられているモノでも、他の県から見れば奇妙なモノがあるかもしれない。
それを日常的に食べていれば、それが当たり前だと思うだろう。
ハタハタもそれに当てはまると思う。今はそれ程でないと思うが、昔は日本の一部の地域でしか食べられていない魚だったのではないだろうか?
2019年12月29日付の北羽新報で、今期のハタハタ漁に関しての記事が載っていた。
記事によると、本県の季節ハタハタ漁は、当初設定された漁獲枠325トンを大きく上回り468トンの水揚げがあった。
秋田県では、県北部・男鹿北部・男鹿南部・県南部の4地区に分け漁獲枠の配分を決めているが、能代を含む県北部は、配分枠の倍近い水揚げがあった。しかし、男鹿南部だけは異常な不漁であった。
しばらく漁獲枠に達する漁はなかったが、今期はそれを大幅に超過する量になった。今までの不漁から、獲れる時に獲っておくという気持ちは分かるが、資源管理のために設定している漁獲枠は無意味になってしまう。ハタハタが、今年また戻って来るという保障はない。

12月のハタハタ漁は男鹿でも好調であった事から、久々にバケツ一杯程のハタハタを頂いた。そのため、今期は存分に食べる事が出来た。煮たハタハタは好みでないので、塩焼きや醤油漬けにして食べた。それでも半分以上は残ったので、三五八漬けにして冷凍保存した。

それを今、食べたい時に出して食べている。

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